防衛テック分類の考え方
(DomainとCapability)

新しい戦闘様態と対応する新技術区分の分類

防衛テック企業について考える際、Domain(領域)とCapability(能力)を整理して考えると各企業の特性の理解が進むと考えています。JDTIにおいては、防衛テック企業がどのDomainに属し、いかなるCapabilityを保有しているかを調査し、国内外の防衛テック企業全体の把握に努めてまいりました。しかし、そもそも防衛におけるDomainやCapabilityとはどのようなものなのでしょうか。

本稿では、JDTIが採用する定義及び考え方についてご紹介します。まずDomainに関する考え方を、次にCapabilityに関する本会の考え方をご説明できればと考えています。

Domain (領域)の分類「陸海空では捉えきれない新戦術」

防衛文脈では、Domainは領域を指す言葉です。従来、軍隊の組織及び作戦は陸・海・空という三つの領域に分別されてきました。しかし、安全保障環境の急速な変化により、現代の戦闘様態は根本的に転換し、陸・海・空といった単一領域での作戦から、宇宙・サイバー・電磁波・認知領域を包含する全領域を統合する「領域横断作戦(Multi-Domain Operations: MDO)」へとシフトしています。その結果、各領域は独立して機能するのではなく、相互に連携し、多層的な脅威に対抗しうる統合的な防衛能力が求められるようになっています。

上記を踏まえ、JDTIでは防衛テック企業の比較分類に当たり、主要防衛テック企業への投資実績を有するBessemer Venture Partners(BVP)をはじめとする米国ベンチャーキャピタルの分類手法をベンチマークとしつつ、日本の防衛省・自衛隊の基準との整合性を重視いたしました。グローバルな投資基準との比較可能性を担保し、かつ国内の調達環境にも適用するため、以下の5領域を主要セクターとして定義しました。

  • サイバー・セキュリティ領域

  • 宇宙領域

  • 航空領域

  • 陸上領域

  • 海上領域

このため今後、本会において登場する個別企業の記事では、防衛テック企業はこの5つのDomainの内いずれかに所属する、もしくは横断的に所属する形で整理しています。

Capability(能力)の分類 「次世代防衛の6つの能力」

各Domainにおける具体的なソリューションについて情報を整理するため、本会では、投資対象をCapabilityの観点から以下の6つのカテゴリーに分類いたしました。

ただし、各防衛テック企業のセグメント分類に当たっては、その企業が顧客に提供するコア・ケイパビリティ(本質的な能力)を決定要因としています。例えば、ドローン型の機器を開発している企業であっても、提供しているサービスが「レーダー照射による測量データの取得・解析」である場合、「自律システム」ではなく、「監視・観測」に分類しています。

6つの能力カテゴリー

  1. 監視・観測
    衛星・レーダーによる監視及び観測、並びにAIを使用したビッグデータの収集及び分析

  2. 情報収集・分析
    情報収集・分析:AIを使用したビックデータの収集および分析
    自律型無人機の制御及び機体のオペレーション実行

  3. 自律システム・オペレーション
    自律型無人機の制御及び機体のオペレーション実行

  4. 次世代インフラ・通信基盤
    衛星通信・情報解析を通じ、データの流通網の提供及びインフラ設備の設置

  5. 最先端製造技術・ディープテックハードウェア
    最先端製造を駆使した、次世代ハードウェアの製造・開発

  6. レジリエンス・アクティブディフェンス
    デジタル・物理領域のカウンター型ディフェンスを提供

なお、本カテゴリーは安全保障領域全体の能力を網羅するものではなく、現在防衛テック企業が競争力を有すると考えられる分野に注力した構成となっております。DomainとCapabilityの両軸から防衛テック生態系を分析することにより、各領域における企業の分布および能力の状況を整理することが可能になると考えられます。本フレームワークは現時点での産業構造を反映したものであり、今後、技術革新や新規参入者の出現に伴い、本分類に該当しない企業も出てくると考えられます。